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ゆずぶろぐ
ゆーえの語るブログ。主に、フォーチュンクエスト(著:深沢美潮、電撃文庫)のトラパスについての創作やらなんやら
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きっかけは、ひどくつまらない事だった。

「トラップ、買い物手伝ってよ」
「あ?何でおれ??」
わたしの言葉に嫌そうな声をあげた赤毛の盗賊は、これまた嫌そうにわたしを見た。
「だって、荷物が多いんだもの。それに、クレイもノルもバイトだって言うし」
「ちぇ、だりぃーなぁ。キットンとかに頼みゃーいいだろ...ったく」
そう言って、彼は寝転がっていたソファーから身を起こす。
わたしは何故かその瞬間かちんときて、叫んで、飛び出していた。
「…別に、いい!」

 


トラップがそういう人なのは分かっていたし、ああいう事を言うのも今に始まった事ではないのも知っている。
だけど、あの嫌そうな声と視線が、わたしを苛立たせた。
わたしはまず、書き上げた原稿を印刷屋に持って行った後、買い物を済ませた。
荷物はすごく重くて、わたしの腕はずきずきと痛み出す。
だけど、あいつに頼るなんて嫌だ。
 
最近、気がつくとトラップと喧嘩ばかりしている。
喧嘩といっても、それは何か理由があるわけじゃなくて、何だか意地を張ってしまって素直になれないだけなんだけど。
さっきだって、黙って付いてきて貰えば良かったのに。
もし心の中ではそれほど嫌じゃなくても、彼はそういう事を口走る人間なんだって分かっていたはずだ。
それに、トラップが快く付いて来てくれる方が変だし。
本当に嫌だったら、狸寝入りでもしてる。だからあれでも、彼なりの優しさのつもりなんだろう。
それがトラップなんだ。
そう思いつつも、一方ではやっぱり素直になれない自分が居る。
もっと優しくしてくれても、いいのに、って。
そんな事をトラップに求めるの、今更おかしいのかもしれないけど。
だけど、親衛隊の女の子には優しいじゃない?
…いや、優しいのとはまた違うのかも。
それとなくその事について、トラップに言った事がある。

『あいつらに対する態度と、おめぇに対する態度って、普通違うんじゃねぇの?』

以前は気にならなかったトラップの言葉が、わたしの心を引っかいて傷をつけるようになったのは最近のこと。
分かってる。わたしがただの『仲間』なんだって。
それ以上でも、以下でも、ない。
その事について不満があるなんて、思っちゃいけない。
優しくして欲しいなんて、思っちゃいけない。
だって、それは『女の子』として見て欲しいって事になるから。
絶対、そんな風に思っちゃいけない。
少しでも思ったら、わたしは気持ちが止まらなくなってしまいそうだから。
それが怖いから。
 


「…あ、雨……?」
額に一滴冷たい雫を感じた後、それはどんどん強く多くなっていった。
だいぶ遠くまで歩いてしまったので着く頃にはずぶ濡れになってしまうだろうし、たぶんこの降り方はにわか雨だろうと思って、わたしは近くの大木の陰で雨宿りをした。
この樹は葉がたくさん茂っているから、下に居ると全然濡れない。
わたしはくたびれた手足を休めるために、樹の根元に腰掛けた。
…そうだ、わたし、とても疲れているんだ。
何に疲れているのかは分からないけど、きっといろいろ。
だから、トラップの言葉を受け止める余裕とかが無くなっているだけ、きっとそれだけ。
………


 
「…ル!パステル!!」
強い力で肩を揺すぶられて目が覚めた。
いつの間に眠ってしまってたんだ……わたし…
「ん…あ、あれぇ?」
「…な、なぁにがあれぇ?だ!!おめぇまさか、寝てたとか抜かしやがるんじゃねーだろうな!!?」
寝ぼけていたとかそういう問題じゃなくて、いつになく真剣に怒った顔に、驚いた。
まだ雨はひどく降っていて、彼のずぶ濡れの赤毛からわたしへと雫が零れ落ちた。
さっきまであんなに腹が立っていたのに、素直に謝罪の言葉が口から出てくる。
「ご、ごめ…なさ…」
「ごめんで済んだら警察はいらねぇ!どんだけ心配かけてると思ってんだ!!このバカ!」
さっさと立て!と手を引っ張られて、わたしはまだ半ばぼんやりした意識のまま立ち上がる。
きつく握られた手が痛い。
トラップは急いで来てくれたんだろう。傘すら持っていなくて、わたしもすぐにずぶ濡れになってしまった。

心配。
それは仲間だから、心配なんだ。
わたしじゃなくても、クレイ、ルーミィ、シロちゃん、キットン、ノルでも、心配するんだ。
当たり前だ。だってわたしだってそうだし。
『わたしだから』、心配してるんじゃない。
「ごめんね、ごめん…トラップ、」
わたしが雨に濡れて冴え始めた意識でそう言っても、彼は何も言わない。
本気で怒ってるんだ。
普段なら、ここで説教でもされそうな雰囲気なのに、今の彼は何も口にせずにただ黙々と歩いている。
「ごめん…」
「…………」
怖かった。
何におびえているのか、自分でも分からない。
トラップの言葉を、ただ、待っていた。
「なにか、言ってよ」
「……」
「ドジとかまぬけとか、何でもいいから、なにか……なにか、言ってよ」
声が震えた。
頬に容赦なく冷たい雨が突き刺さる。
その頬を濡らす雫の中に、一滴だけ、暖かいものが流れた。
泣いたら負けだ。
そんなの、負けを認めることになってしまうのに。
…トラップが、振り返った。
「…おめぇ、泣いてんの?」
「…ちがっ」
「違わねーだろ」
トラップは、大きなため息をつく。
呆れられてしまったの?
「ごめ…わたし、」
「泣くのは、卑怯だ」
「……え?」
「おめぇが泣くのは、卑怯だ」
トラップはもう一度わたしにため息をついて見せて、そしてまたわたしに背を向けてしまった。
「…おれの、気持ちが分かったか?」
「なに、それ」
「『別にいい!』って言って、おれの好意無視しやがって。無視される気持ち、少しは分かったか?」
仕返しだからな、と言って、トラップはわたしの手を更につよく握った。
だけど、不思議と痛くはなかった。
代わりに、締め付けられたように胸が苦しくなる。

「それでも来てくれたの?」
そう言うと、即座にばかじゃねーの?と切り返される。
「例え『別にいい』っつったって、放っとかねぇよ」
ああ、やっぱり優しいんだ、トラップは。
やっぱり、  。
抑えたはずの気持ちが、再び顔を出す。
雨が、止まない。
「こんなドジ女、放っておけるもんならとっくに見捨ててる」
「……それは『わたしだから』、来てくれた、って思ってもいいの?」
「他の女とは違って、おめぇを守んなきゃなんねぇからな。おれは、」
それは、仲間だから?

「     」

 

トラップは振り返って、その言葉を雨音に掻き消されそうな程小さい声で、わたしの耳元で呟いた。
だけど、わたしの耳にはちゃんとそれが届いた。
だから、止まらなくなった。
大きくて、強くなった、キモチ。

「じゃあずっと、わたしを守っていて」
わたしのそばにいて。
わたしをみていて。

「ああ」

すきだから、と。
その言葉をまた、聞かせて。


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久々に書いたトラパスです。

なんかすごい恥ずかしいんですが。

トラパス熱再燃下はいいものの、この人たちってこんなんだっけ?

さあ逃げよう(どこへ?)

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ゆーえ
性別:
女性
職業:
某マンモス大学生
趣味:
音楽鑑賞とかネット、小説読んだり書いたり飲酒したり
自己紹介:
じれじれなトラパス大好き。
だめ学生まっしぐら。
だいぶ隠れオタクさん
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